パーキンソン病の看護


前回もお話しましたが、パーキンソン病は
根本的に病気を治す治療はありません。

投薬やリハビリによる
対処療法を行い、病気の進行を
少しでも遅らせる治療が中心となります。

一口にパーキンソン病と言っても
細かい症状の有無や病気の進行具合などにより
さまざまで状況に応じた看護が必要となります。

一般的にパーキンソン病の
病状の進行はホーン・ヤールのスケールが
目安にされています。病状の分類は下記の
5段階があります。

ステージ1 一側性のパーキンソニズム
ステージ2 両側性パーキンソニズム
ステージ3 軽度〜中等度のパーキンソニズム
ステージ4 重篤な障害を示す
ステージ5 介助必須

ここでは上記の目安ごとに解説していきます。

パーキンソン病の症状進行の目安


パーキンソン病の4症状として、
安静時振戦、無動・寡動、筋固縮、姿勢反射障害があります。

1 姿勢反射障害

重心がぐらついたときに、
姿勢を立て直すことができず、
そのまま倒れてしまう症状です。

2 無動・寡動

歩く速度が遅くなり、歩幅も狭くなります。
進行すると自力での歩行も難しくなります。

3 筋固縮

関節の動きが鈍くなり
ロボットの様なぎこちない
動きになります。

4 安静時振戦

落ち着いていたい時に、
無意識に手や足に細かな震えが生じます。

個人差はありますが上記の症状が
病気の進行に従って進んでいきます。

ここからはパーキンソン病の重症度段階について説明します。
段階は、ステージ1から5まであります。

ステージ1 一側性のパーキンソニズム


体のどちらか一方に震えや筋肉の緊張が
あるものの一般的な生活には支障はなく
介助は不要です。

薬を服用せずに経過を見る事が多い時期ですが
症状の進行がないか良く観察しましょう。

ステージ2 両側性パーキンソニズム


震えや筋肉の緊張といった症状が
体の両側に現れます。日常生活には
支障はありませんが、整骨医院での治療や
歩行や運動のリハビリを週2-3回程行う事で
症状の進行を遅らせる事が出来ます。

まだ服用せずに経過を見る事が多いですが、
仕事など生活でどうしても状態の改善が必要な場合は
主治医と相談しましょう。

ステージ3 軽度〜中等度のパーキンソニズム


明らかな歩行障害が現れ、バランスを崩し転倒しやすくなります。
日常生活にはまだ介助は不要ですが、このあたりから
対処が難しくなります。というのも
できるだけ運動をさせた方が症状の進行を遅らせる事が出来る
一方で、転んだりして骨折や怪我をした場合、
一定期間体を動かせなくなり、病状が一気に進行する
リスクも伴います。一般生活以外にも、リハビリを
行って運動量を維持すると共に、治療薬の投薬を開始し
転倒のリスクを防ぐ事が必要になります。

運動といっても特別な事をする必要はありません。
介助者と一緒に散歩に出かけたり、
買い物に行ったり、日常生活できることを
その日の体調や病状に応じて少しずつ
取り組んでいくことをお勧めします。

 住居においても地方自治体が受け付けている
住宅改修費支給等を利用して、手すりや段差をなくす
器具等を取り付けて環境面からも患者に寄り添う事が
重要になります。

住宅改修費支給申請書については私の住む
大阪市のホームページで概要を参考にしてください。

大阪市住宅改修費支給申請書


ステージ4 重篤な障害を示す


日常生活の動作が自力では困難で、
その多くに介助が必要になります。歩行はつえを使う事で
なんとか可能な状態です。

個々の状況や生活環境により難しい部分がありますが
介助者の付き添いのもとではできる限り自力で
歩行させましょう。車いすでの移動が中心になると
足の裏からの刺激が無くなる事、下半身の運動が無くなる事で
病状の進行が早まる可能性があります。
転倒のリスクはしっかりと認識したうえで
可能な限り運動や刺激を与え続ける事が
重要です。

またこの頃にはすでに要介護度の認定は
3以上の重篤な状態と認知されていると思います。

介護と並行してデイケアやショートステイの利用
で介助者の負担軽減、これ以上病気が進行した時に備え
介護老人福祉施設への申請や養老型病院への入院など
末期に備えた準備を、主治医やケアマネージャーなどと
話し合っておくことも重要です。

ステージ5 介助必須


ついに最終段階です。車椅子または寝たきりでの
生活となり、介助が必ず必要になります。
この段階でも症状の進行により状況は様々です。
初期段階では介助者に手をひかれながら歩いたり、
トイレやベットには介助があれば歩いていく事が
可能だったりしますが、病気が進行するにつれて
食事が自力では取れなくなったり、さらに進むと
液状のものを口から摂取することが難しくなります。
ここまで進行すると、家庭での介護は困難です。

経済状況等個々の事情はあると思いますが
介護老人福祉施設への入院や入所が望ましい所です。

難病に指定されている病気のため
入院費用等が大幅に免除される場合もあります。
ケアマネージャーや主治医と相談し
早急に対応を検討、実施しましょう。

まとめ


治療法がない以上、対処療法を
行っていくしかありません。
転倒のリスクが高まるステージ3以降は
それでもがんばって運動させるのか、
転倒のリスクを考え安全な場面のみに
限定させるのかといった難しい判断を
迫られるようになります。

「介助者」にも人生があり、生活があります。
その時々で、状況、環境に応じて対応した後、
介護老人福祉施設等へ入所させることは
何も恥ずかしい事ではありませんし
戸惑う事でもありません。

要介護度が5になっていても地域や施設によっては
入所に1年以上時間がかかる場合があります。
先に申請をしておいて、順番がまわってきたら
一旦様子を見るという事も可能です。

手遅れになる前に「介助者」の事も考えた
計画をケアマネージャや主治医と
立てるようにしてください。

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